太古のチー牛コミュニティ発掘で当時とのギャップを感じる
「チー牛」という言葉がネットスラングとして初めて使われたのは2018年頃。
地味なオタク男子の見た目に対する揶揄として、某牛丼チェーンの「3色チーズ牛丼」というメニュー名が象徴的に使われるようになった。
でも、実はそれとはまったく関係ないところで、2009年にmixi上に「3種のチーズ牛丼」という名のコミュニティが存在していたのを発見しました。
それがこちら
※mixi未登録のユーザーは、投稿の一部のみが表示され、コミュニティ参加者のプロフィールなどは確認できません
これ、当時本当の「チーズ牛丼好き」が集まっただけの、ゆる~いファングループ。
スラングとかミームとか、そういう文脈とは一切関係ない模様
にもかかわらず、後年のネットスラングと名前が一致してしまったせいで、なんともいえないノスタルジーとおかしみが生まれてしまっている。
この記事では、その“たまたま一致してしまったコミュニティ”を眺めつつ、ちょっとしたネット文化のズレについて書いてみる。
2011年で投稿の止まったチー牛コミュニティ
まずこちらのコミュニティは投稿現在のコミュニティー参加者は199人
2008年10月14日で、最終投稿は2011年で停止。
主に一人のユーザーがトピックをやや荒らし気味に乱立させているのの、コメントが付いているトピックは少なくユーザー間のやり取りは殆ど見られませんでした。
mixiは膨大な数のコミュニティがあるので自分の気に入ったコミュニティに参加し、エンブレム的に利用するだけのユーザーは多かったのでしょう。
実際の参加者を見てみると…
コミュニティのプロフィールページには、現在も参加者のアイコンが表示されている。
ざっと見たところ、アニメ系アイコンを使っているユーザーも数人はいるものの、主流なのはむしろ当時の“自撮り系”のプロフィール写真。
特にいわゆる「陽キャ」と呼ばれるような雰囲気のユーザーが目立ち、
ネットスラングで連想されがちな“陰キャっぽさ”とは正反対の空気すらある。
つまりこのmixiコミュニティは、オタク的なノリで作られたものではなく、もっと純粋に「チーズ牛丼好き」な人たちがゆるく集まっていた場所だったといえる。
この事実は、「チー牛」という言葉に含まれるネガティブなイメージが、どれだけ後付けで作られたステレオタイプだったのかを考えるきっかけにもなる。
どうして“チーズ牛丼”が「陰キャっぽい」と言われるようになったのか?
すべての発端は、ネット掲示板に転載された「チーズ牛丼食ってそうな顔の陰キャ」のイラスト。
「すいません、3種のチーズ牛丼の特盛に温玉付きでお願いします」
と注文する男性を描いたイラストで、地味な髪型・メガネ・猫背・気の抜けた表情といった“陰キャ”記号が満載だった。
このイラストが一気に拡散されたことで、「チーズ牛丼」=「その見た目の人物(よくいる少し気持ち悪いオタク、存在感のない陰キャ)」という連想が生まれてしまったのだと思われます。
また、チーズ牛丼は独特の組み合わせや味の濃さやボリューム感からオタクが食べてそうというキャラクターづけも刷り込まれてしまったのでしょう。
まとめ ネットスラングに振り回された奇妙な食べ物
2009年にmixi上で作られた「3種のチーズ牛丼」コミュニティは、純粋にそのメニューを愛する人々が集まった、ごく自然で無害なファングループだった。
参加者を見ても、むしろ陽キャ寄りのユーザーが多く、現在ネットで揶揄的に使われる「チー牛」イメージとは大きくかけ離れている。
それにもかかわらず、2018年頃から始まった「チーズ牛丼=陰キャオタク」というネットスラングの流行により、チー牛のイメージはネットユーザーから偏見を持たれるようになってしまった模様。
その事実がむしろ、「ネットミームの強引な記号化」と「実在する人々の多様性」とのズレを浮き彫りにしている気がします。
今では笑いのネタとして消費されがちな「チー牛」という言葉だがも、その裏側には、言葉が勝手に暴走していくインターネットの空気があったのではないのでしょうか…