怪談「さっきのおばあさん」
さっきのお婆さんを見た男性の証言である
男(30代・仮名Y)
「最初は……ただの通りすがりの、気の毒なおばあさんかと思ったんです。
山道を下ってたら、向こうから歩いてきて。
背中がね、もうL字みたいに曲がってて、顔もちゃんと見えないくらいだったけど――手ぇ、振ってたんですよ。すっごいゆっくり……ぎこちなくて、力なくて。
だけど、こっちをずっと見てるのはわかった。片目だけ光ってたように見えて。
なんか“目の奥に明かりがある”みたいな、不自然な光り方でした。」
Yさんが出会ったのは、いわゆる“さっきのおばあさん”と呼ばれる怪異とみられている。
奥飛騨の一部地域にのみ伝わる、名前も来歴も不明の存在。
特徴は、“記憶を狂わせる”ことだ。
(証言再開)
男「あとから思い返すと……時間がおかしいんですよ。
あれ、2日前だったと思ってたのに、気づいたら“さっき”の出来事として頭にある。
昨日の晩飯が思い出せないのに、あのおばあさんの顔だけは、やけに鮮明で。」
「しかも……あの時、つい、手を振り返しちゃったんです。反射的に。
そしたら、おばあさん、笑ったんですよ――にたぁ〜って。
口が……信じられないくらい裂けてて、歯が、なんか、すごく濃い黄色で……。
あんな色、見たことなかった。乾いた骨みたいな……なのにベタついてそうな。」
“さっきのおばあさん”に手を振り返してしまった者は、現実との境界が曖昧になると言われている。
時間、記憶、そして自我さえも。“さっき”という曖昧な過去に取り込まれていくのだ。
男「その日から、頭の中に“あの手”の残像がこびりついたように離れない。
寝てる時も、風呂に入ってる時も。
あの、湿って乾いてるような皮膚の感じ……手の裏が、土色なんですよ。ひび割れて、爪が長くて。
まるで誰かを土の中から引っ張り出して、そのままこっちに来たような手でした。」
「で、気づいたら……夢の中でも会うようになって。
しかも、会うたびに“さっき、会ったねぇ”って言うんです。
もう、あれ夢なのか現実なのかわかんないんですけど……
今も、頭の中に、ずっと“さっき”が続いてる感じがして……抜け出せないんです。」
“さっきのおばあさん”は、時間を侵す。
何日も前の記憶を、まるで“今起きた”かのように塗り替える。
名前を持たず、正体もわからず、けれど確実に、“そこにいた”とだけ思い出される――
そんな、存在しないはずの記憶。……あなたも、思い出していないか?
“さっき、どこかで、おばあさんと会ったような気がする”って――
ネタバレ
これは、旅行中に家族と雑談しながら思いついた話に、ChatGPTに肉付けをしてもらった正真正銘の作り話です!
なかなか怖かったと思うのですがいかがでしょうか(;´Д`)??